◇大石内科クリニックの災害への取組み
◇東日本大震災について
◇停電訓練を実施して 2017年3月28日
〜大石内科クリニックの災害への取組み〜
2011年の東日本大震災時に当クリニックは施設等すべての医療機器においても被害はなかった。
しかし断水、停電により1日のみ透析続行が不可能となり当日の患者様には迷惑をおかけすることになりました。
その教訓を踏まえ「患者様に災害時でも安定した透析を供給する」をモット‐にし次の設備を導入しました。
@断水対策として地下水を掘削し安定した供給ができる井水浄化設備
A停電対策として瞬時に電力を供給できる自家発電設備
以上の設備を導入することにより自然災害等のライフラインの断絶時においても当院では安全に安定した透析治療を行うことができるようになりました。
@井水浄化設備
災害時、市水の供給停止に見舞われても自前で水の確保ができるよう地下水の掘削を行いました。地下水を濾過し安全な水を供給するため、消毒装置、前処理装槽、濾過装置2台の他、UF膜と塩素濃度計等が設置されています。万が一災害等のトラブルが発生した場合でも治療に必要な水の確保が可能となり「断水」しない安全対策がされています。
(1)左手前の黒のラインのタンク
次亜塩素酸Naを注入し、地下水中のアンモニアを除去する
(2)中央ののぞき穴の様なものが上下についている二つ並んでいるタンクの奥
地下水中のマンガン、鉄を吸着除去する
(3)手前のタンク
残留塩素を活性炭に吸着させ除去する
A自家発電設備
落雷、自然災害などの停電時に、LPガスを燃料として発電する設備で、停電時に自動で起動し、電力が復旧すると自動で発電が停止するシステムです。
LPガスが満タン時は1日半の電力の供給が可能である。万が一停電が長引きLPガスの残量が低下した場合においても無線により情報が送信され、LPガスの充填を行います。そのため、停電が長引いたときにおいても、安定した治療を行う事が可能となりました。

〜東日本大震災について〜
2011年3月11日金曜日、東日本大震災。当クリニックは、透析2クール目の真っ最中でした。大きな揺れを感じましたが、一旦収まったので、そのまま透析を続行しようと思っていたところ、再度大きな揺れが起こり、そして停電しました。
地震の揺れは大きく、長い時間でしたが、幸いベットから落ちる方や針が抜ける方はいらっしゃいませんでした。しかし、停電のため透析続行は不可能と判断し、全員返血し終了としました。ご自分の運転で帰る方、お迎えが来た方、クリニックの送迎車で帰る方、さまざまでしたが、停電で信号機も止まってしまっていたので道路は大混乱でした。すべての患者様がクリニックを出たのは19時ごろだったと思います。
建物に大きな損傷はなく、コンソールや水処理の機械も無事でした。停電は翌日の早朝には復旧しました。しかし、水道は止まったままです。血液透析は大量の水を使用します。貯水タンクに多少の水は残っていましたが、当時47床の透析ベットを有しとても足りません。12日土曜日はECUM(除水)のみの治療とし、全患者様の血液検査をし、血清K値が高値の6名の方のみ、近隣の土浦協同病院に透析を依頼し、スタッフ1名が付き添いました。
13日日曜日。普段は透析がお休みの日ですが、スタッフ一同集まりました。未だ水道が復旧していない状況であり、明日以降、当クリニックで通常通り透析が再開できるかは、水道がいつ復旧するかにかかっています。問合わせてもどうなるのか予想も立ちません。明日以降の透析をどうするか?昨日透析が出来ていない患者様をどうするか?
院長先生が、近隣の総合病院に連絡をとり、東京医大茨城医療センターとつくば学園病院で臨時透析を受けて頂けることになりました。180人を超える全透析患者さまへ手分けして電話で連絡をとりました。しかし、中々つながらない方も多く、3つの外線を使って6時間程かかりました。連絡の取れた患者様から、2つの病院へ行って頂きました。スタッフも二手に分かれ各病院に出向きました。とりあれず、ほぼ全員の患者様に透析治療をうけていただきました。
翌月曜日からは、県に連絡し、水ポンプ車を回して頂きました。二間隣りの水道局を往復して何とか透析を実施しました。電気と水が何とか確保出来た後も、計画停電で治療が出来ない時間があったり、ガソリン不足で送迎車のガソリンを確保が難しかったり、茨城県への流通が途絶え材料不足となりましたが、業者の担当者が営業車で必要な材料を運んでくれました。大混乱の数日間でしたが、沢山の皆様のご協力で乗り切ることが出来ました。とても感謝致しております。
水道が復旧したのは16日水曜日ごろだったと記憶しています。東日本大震災では、ライフラインが途絶え、透析が実施出来なくなるという状況になりました。しかし、電気は比較的早期に復旧しました。水道は、地震の影響で水道管が壊れ、直してもまたどこかの水道管が水漏れするという状況になり復旧が遅れたとのことでした。
現在、災害対策委員会として、各部署から代表者を選び、月1回災害対策について話合っています。
毎月1日と15日NTTの災害伝言ダイヤル体験日です。 
全患者様と全スタッフ対象に毎月1日は、当院の伝言ダイヤル体験日とし、練習をしています。
ほとんどのコンソールをプライミング・回収も透析液で行い、生食がなくても透析が実施出来る(日機械装社製100NX)に変更しました。
電気が止まると、「電子カルテから患者様の情報を取り出せない」という経験
から、紙媒体での情報管理も必要だと感じました。
電子カルテのみに頼らずに、、、昔ながらの連絡簿を作成しました。

さて、停電の時点灯する、非常灯の明るさはどの位なのか?スタッフで体験をしました。


予想以上に明るく、返血も問題なく行えることが分かりました。
〜停電訓練を実施して 2017年3月28日〜
一番身近に起こり得るトラブルは停電です。気候の変化による落雷や、以前には原因不明の停電が数時間続いたこともありました。
当院では災害対策として自家発電設備を導入していますが、導入後実際に停電は体験しておりません。そこで外来や透析を通常に行っている状況を想定し、停電体験訓練を試みました。
実際の場面での状況確認や問題把握によって、慌てずスムーズに患者様に対応できる行動マニュアルが作成できるのではないかと考えました。
どのような状況でも全スタッフが外来・透析患者様に対して、安心・安定した治療が受けられるような援助ができるよう努めていきたいと思っております。

院長・小川医師・スタッフ40名以上の参加がありました。まずは、停電訓練についての説明をしました。

停電時透析室の状況です。
照明やコンソール(透析器)の電気が消え、非常灯がつきアラーム音が鳴り響きました。

停電後20秒で自家発電切り替わり、照明がつきアラーム音が止まりました。コンソールは運転停止状況なので運転開始操作が必要でした。透析の通信システムのサーバーを再起動し、その他端末パソコンや体重計も再度立ち上げが必要でした。自家発電可能なコンセントは非常時のみ使用になっています。電力を最小限に抑えなくてはいけないため、テレビやDVD・電気毛布などの使用できません。


臨床工学技士は水処理装置や自家発電コンセント設置状況、屋外の発電機の状況を把握し意見交換をしました。当院の自家発電装置はLPガスを燃料としていますので、地震の際は震度5以上の揺れを感知すると家庭同様ガス供給が停止します。その際は停止解除操作が必要なため、屋外発電機まで走って約1分20秒、解除に数秒、解除後3分経過し発電が行われ、電力供給できるには約5分程度はかかる事が分かりました。


外来は事務室照明とカルテサーバー、事務室自家発電コンセントのみ自家発電作動します。事務室の自家発電コンセントは2つなので有効利用する必要があります。
以前発電機導入前の際、外来カルテのネットワークエラーでカルテが立ち上がらない事は確認していました。そのため今回こそ何らかの方法を見つけるために、各業者の方立ち合いのもと実施しました。
結果1台ではありますが、カルテ使用可能な対応策ができたので良かったです。これで患者様の状況や、処方内容などの確認が可能になりました。検査は続行できず採血などの検査結果は次回になってしまいますが、手書きではありますが処方箋はお渡しできます。お会計については明細書等の印刷ができないため、どのようにするかは今後検討し患者様にご迷惑おかけしないような対応を考慮していきます。
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